躑躅


あの壁は壊れたというのに 透明な壁は目の前に
足元の影は澱を成し 白い靴で地面踏みしめる

春の風が頬を掠めてく
日差しは優しく微笑みかけ

赤い花が咲いて こんなにも命を咲き誇って
今年も未来も 躑躅はあるべき姿で生きていくのに

この世界は変わり始めたのに 取り残される僕はただ一人
鮮やかに映る光景に 黒い服が浮いて弾かれる

肩にのしかかる事実が苦しい
木陰に冷たく取り残され

白い花が散って 糜爛した命を重ね合わせ
未来の僕は腐乱した躑躅のように消えてゆくのだろう

赤い花白い靴 希望は目の前に
白い花黒い服 絶望は足元に