Cycle17 LOOP - 回路

階段の前、僕は立ち止まる。カンと薄い鉄板を踏み鳴らす。
(やはり人間が多すぎる)  流れるヘッドライトはくたびれている。

闇にしか生きれぬ廃物は鈍い音と共に最上階へ——

最後の踊り場に差し掛かる。目の前に人影が立ち塞がった。
衣が揺れる。その色に僕は影の姿を認めた。「あぁ、あなたか」
「お前は何も語り得ぬままに、永遠の沈黙をするつもりか?」
「もう全て、無意味では?誰も追いつかないし、僕は追うつもりもない」
「許さない。お前のしようとする行為は、無限退行そのものだ」
「残念だけど、僕はあなたとは違いすぎる」口遊む歌の一節。
「俺の存在の矛盾をどう説明する?《ここ》にいるのは誰だ?
俺の影はお前のシソウ。ならば、お前には可能性があるはず」
「可能性の無い、意志無きモノに運命は微笑まない。僕は虚無」

「運命は意志だ。お前が望めば彼女は微笑む。彼も然り。
お前はまだ、俺の時間まで見ていない。十五年先を見たか?
初めに弱さと強さをソウゾウし、俺を〝不完全なもの〟とした。
十五年先の俺が抱えている哀しみも苦しみも癒えぬ。
それでも、存在する事を諦めなかった。それはお前の期待。
人生はシコウだ。未来の俺は、今以上に泣く事が多い。
それでも、人生を悪くないと判断をさせたのは、お前の意志。
〝嫌と言う程生きろ〟そして、生き抜いてから答を出せ。それからだ」

気の抜けた様に僕は彼の瞳を見ていた。揺れている表面。
「さて、降りようか。今日は満月だから、足元もよく見えるだろう」
どうやら、未来には見捨てられていない様だ。これが《   》イシか——
「お前は、何度でも生き返る事が出来る。まるで不死鳥の様に」

運命は、そう、カルミナ・ブラーナ。廻り続ける閉鎖系の回路。